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コラム

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寄稿《“計測への思い”と“光ファイバセンシングへの期待”》藤川富夫(理事((株)アサノ大成基礎エンジニアリング)

2016年10月17日

事務局

 長年、光ファイバセンシングビジネスに携わってこられた、(株)アサノ大成基礎エンジニアリング 藤川富夫様(当協会理事)に、「“計測への思い”と“光ファイバセンシングへの期待”」を寄稿頂きました。
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計測との出会い 
 最初に私が計測というものに初めて関わったのは、ゼネコンの新入社員として市街地の駅前に新設地下駅を築造する工事現場に配属された時でした。工法としては親杭横矢板の開削方式で地下20m近くまで掘削するもので、ビルに近接した掘削なので山留壁の安定が重要な課題でした。当然設計上では安全性は確保されていましたが、土木の難しさは掘ってみなければ実際のところは分からないという点です。この現場では切梁軸力計を数カ所に設置して土圧の管理を行っており、私はこの切梁軸力計の値を読み記録を毎日記入することになりました。現場は何事もなく終わりましたが、今振り返ってみれば反省することが多くあります。先ず、山留設計計算書を自分で充分に理解していなかったこと、計器の仕様や設置方法について確認しなかったこと、軸力計以外の計測との関係まで考慮しなかったことなどなど、今にして思えば後悔することばかりです。その時は早く一人前の土木技術者になることを目指し、施工や現場管理のことで頭が一杯で計測に対する優先順位が低かったのだと思います。
 その後いくつかの土木の仕事に関わりながら、計測やモニタリングに接する機会が多々あり徐々に計測の重要性を感じるようになりました。たまたま私が中堅技術者となる頃にNATM工法(New Austrian Tunnelling Method:新オーストリアトンネル工法)がわが国のトンネルで採用されるようになり始め、私も地盤の安定と変状解析を担当することになりました。NATM工法は従来のように鋼材による剛構造で地山を支えるのではなく、地山の持つ自立性をロックボルトや吹き付けコンクリートで補強しつつトンネルの安定をはかる工法で、地山の変状計測、ロックボルトの軸力や吹き付けコンクリートの応力変化の管理が工事を左右するほどの重要性を持っています。当時ボーリング調査や地山試料の物理試験の結果からトンネルの安定性を解析した解析結果と施工中の計測結果を見ながら関係者同士でトンネルの安定性を真剣に協議したことを今でも良く覚えています。
計測への思い
 NATM工法が定着するとともに調査や設計の妥当性を計測で確認しながら合理的に施工する計測施工ということが言われだして、土木工事において調査から計測・施工まで全体を見通す技術者の重要性が増してきました。そのような中で私は何となく現場計測に対して疑問を抱く様になりました。その時までは計測で得られたデータは正しいものとして問題は事前の地山強度の想定や設計・解析にあると考えていたのですが、どうやら計測自体にも問題があると思い始めるようになりました。
 長年勤めた建設会社を早期退職した際、計測の疑問を解決しようと思いもあって計測会社に勤めることになりました。計測会社に身を置いて感じたのは、計測機器を設置する技術者の中には計測機器の知識や経験は深いものの土木の設計や施工に対する理解や知識が少ない人達も多いということでした。計測において重要なのは設計や施工を考慮したうえで計測機器を選定し適切な方法でそれらを設置することで、そうでなければデータの信頼性はありません。「計測会社は計測機器や設置工事が商品ではなく、正しいデータこそが商品である」と言う言葉は正鵠を射た至言であると思います。正しく得られたデータを様々な角度から解釈するといろんなことが分かってくるものです。計測の意味を調べると「特定の目的をもって、事物を量的にとらえるための方法・手段を考究し、実施し、その結果を用い所期の目的を達成させること」とあります。何のために何を測定し得られた結果をどのように反映させるかまで、調査・設計・計測・施工に関わる技術者同士が共に考えて計測に取り組むことがますます重要になってくると思います。
光ファイバセンシングへの期待
 光ファイバセンシングに出会ってからもう20年近くになります。最初は原理を理解するのに戸惑いましたが、原理が有る程度分かってくるとこれは画期的な手法だと思われ、もしかしたらこれまで電気計測で悩んでいたことや出来なかった計測が簡単に解決出来るのではないかと思いました。電気ノイズに左右されない、長距離計測が可能、伝送用ファイバが断線しても復元が簡単にでき計測データの連続性が維持できる等の光ファイバセンシングの利点を説明して、計測計画が採用され実際にいくつかの現場に設置しました。当初は原理がシンプルなので容易に現場適応できるものと思っていましたが、光ファイバセンシングには光ファイバセンシングなりの難しさがありFBG方式、BOTDR方式それぞれに異なるトラブルに見舞われ、その度に関係者で知恵を出し合いながらなんとか解決することが度々有りました。
 光ファイバセンシングはまだまだ事例やセンサの種類も少なく発展途上の技術だと思います。今後大きく普及するためにも関係各位がそれぞれの知識や経験およびノウハウ、場合によっては失敗事例も出し合い共有し、この手法がより一層ブラッシュアップされユーザの期待に満足に応えられる日が早く来ることを願っています。

(株)アサノ大成基礎エンジニアリング については こちら
(株)アサノ大成基礎エンジニアリングの光ファイバセンシング技術については こちら 


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