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コラム

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寄稿《International Conference on Smart Infrastructure and Construction (ICSIC)(スマートインフラと施工に関する国際会議)に参加して》 今井道男(鹿島建設(株))

2016年9月5日

事務局

 英国ケンブリッジ大学で開催された "International Conference on Smart Infrastructure and Construction (ICSIC)" に、鹿島建設(株)の今井道男様が参加されましたので、寄稿していただきました。
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 ここ数年、ケンブリッジ大学を中心に英国でインフラのモニタリングが盛んな様子を耳にする機会が多くありました。例えば、複数のメーカの方が、大学にセンサや計測器を納めたとおっしゃっていました。日本においてモニタリングの展開に苦心している中、隣の芝生は青く見えるせいかも知れませんが、これまで関連分野において英国での活動が目につくことが少なかったこともあり、興味を抱いていたところでした。そのような折、昨年聴講した東京大学とケンブリッジ大学の共同公開セミナーにおいて、「次回はケンブリッジでお会いしましょう」とのアナウンスがありました。自身の光ファイバセンサに関する研究も首尾よく進捗し、本年6月末にケンブリッジで開催された「International Conference on Smart Infrastructure and Construction (ICSIC)(スマートインフラと施工に関する国際会議)」に参加することとしました。
 渡英したのはEUからの離脱をめぐる国民投票直後でしたが、恐らく会議計画時点には主催者もまったく予想していなかったものと思われます。しかし、旅行者からみる限り目立った混乱は見られず、傍目には落ち着いていたように見受けられました。ニュースでも、当時開催していたウインブルドンでの英国選手の躍進や、サッカーユーロ2016での英国のまさかの敗退が、EUの話題同様あるいはそれ以上に大きく取り上げられていたほどでした。会場であるケンブリッジ大学へは、ヒースロー空港から地下鉄で1時間弱、さらに映画ハリーポッターの出発地のモチーフとされたロンドン北部のキングスクロス駅から列車に乗ることおよそ1時間のケンブリッジ駅から向かいました。初めて訪れる大学でしたが、その規模と至るところで醸し出される伝統に圧倒されました。

 ディナーの様子
          ディナーの様子 

 ケンブリッジ大学を中心とした英国の研究機関が主催した本会議の特徴は、①街づくり②アセットマネジメント③センサ(モニタリング)と幅広い分野の融合を目指そうとしている点です。会議期間中の3日間すべては、招待講演から始まり、その後各3分野に分かれてセッションが並行して進み、1日の最後にはまとめて各セッションの総括をした後、参加者全員で議論をするという形式でした。これまでにも関連する国際会議に出席しましたが、分野横断で横串を通そうとする主催者側の意図が最も顕著に現れていました。ディスカッションの中で、建設分野を自動車や航空宇宙分野などのように知識ベース産業へ転換することの重要性が熱心に語られていたのが印象的でした。本会議における3分野も、こうした文脈のもとにあるべきとの趣旨です。そのためのポイントとして、「シナリオに投資すること」「同意形成のための環境的・社会的パラメータを導入すること」「設計行為を施工者や資材メーカと直接つなぐこと」などが挙げられていました。投資し、かつリスクをとるプロジェクトマネージャーが勝者となるであろう一方で、新規参入者(Tesla(電気自動車)、AirBnB(民泊サービス)、Uber(自動車配車サービス)など)が次世代の建設産業の勝者かも知れない、とも。駅周辺に駐車場が不要となることを考えれば、Uberも社会基盤インフラと言えるであろうとのロジックです。変化の激しい社会状況を踏まえたうえで多角的視野から、少なくとも日本のエンジニアリング分野ではなかなか語られることがないようなパラダイムシフトをなそうとする姿勢は非常に刺激的でした。また、日本でモニタリングの必要性が語られるときに挙げられることの多い、インフラの高経年化や少子高齢化については殆ど触れられることがありませんでした。代わりに、気候変動や低炭素や省エネルギーなどの環境的側面がその動機となっていることも特徴的でした。

 会議の様子
             会議の様子

 自身の発表は、センサセッション内で行いましたが、初日の午前中だったのは幸運でした。「こいつがこんな事している」といった印象を会議前半で持ってもらえるので、その後のコミュニケーションが比較的円滑にいくためです。発表内容は、計測器メーカと共同で実施している新しい技術についてでしたが、休憩時間にも「お前は日本のメーカの技術者か?販売するのか?」「お前のところの初期の製品をまだ使っている。早く安いのを出せ。」といった勘違いも含めてコメントをいくつか受けました。日本製品への信頼性と期待の高さを図らずも感じた出来事でした。センサセッションの中では、光ファイバセンサに関する発表数が最も多くありました。発表の多くは分布型技術を用いたものが多く、BOFDRやレイリーなど原理そのものも多岐にわたっていました。風力発電で適用数を伸ばしているFBGに次ぐキラーテクノロジーがまだ見定まっていないためかもしれません。センサひとつひとつの技術自体は必ずしも目新しいものではないかも知れませんが、やはり研究開発全体としての取組みのシナリオ付けに対して大きな労力を費やしている様子でした。

 ポスター会場の様子
           ポスター会場の様子

 ロンドン地下鉄は空港や都市部をつなぐ大動脈ですが、建設後150年を経過していることから、その不具合が経済活動に直結することに対する危機感が英国内で共有されています。ロンドン地下鉄の管理者による基調講演からも、こうした課題解決をなそうとスマート構造・スマート施工に対するニーズの大きさと期待がうかがえました。一方、自身のようなシーズに近い視座に立てば、シーズ技術で実現されるスマート構造・スマート施工の先にあるビジネス的・社会的メリットを創出していくことが必要です。主催者が強調していたシナリオを構築し、確固たる縦串をニーズ~シーズ間で通す場として、本協会の活動が積極的になされることを期待したいと思います。
                           (鹿島建設(株) 今井道男)


CSIC (Cambridge Centre for Smart Infrastructure and Construction) は こちら
ICSIC (International Conference on Smart Infrastructure and Construction) は  こちら
ICSICプログラムは こちら

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