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光ファイバセンサ概論(6)

基礎編<その1>(10)

基礎編<その2>(10)

基礎編<その3>(10)

基礎編<その4>(3)

設計編<その1>(10)

設計編<その2>(3)

施工保守編<その1>(10)

施工保守編<その2>(10)

施工保守編<その3>(7)

コラム(11)

設計編<その1>

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05_FBGの精度、分解能および適用用途の目安

事務局
FBGスペクトラムから得られる情報としては、ブラッグ波長、反射強度、スペクトラム形状があります。この中で、最もよく利用されるのが、ブラッグ波長です。

市販のFBG計測器は、このブラッグ波長を高精度に測定することを目的として設計されています。測定性能としては、波長確度、波長再現性、測定周波数、動作温度範囲、波長域、FBG数、ポート数が挙げられます。

1.波長確度
これは、測定されたブラッグ波長の確からしさで、測定値と真値とのずれの範囲を示しています。FBG計測器を交換した場合、交換前のFBG計測器の測定結果と、交換後のFBG計測器の測定結果では、値に差があります。

この差が大きい場合、交換前後での測定結果の比較ができなくなる場合があります。たとえば、波長確度10 pmを保証するFBG計測器であれば、交換前後での測定値の差は最大でも20 pmとなりますので、安心して測定を継続することができます。

FBG計測器が設置された環境が25 ℃のときにのみ保証する製品と、使用保証範囲(たとえば、0 ℃から50 ℃)で保証するものがあります。また、ある波長に限定して波長確度を保証するFBG計測器と、波長域全ての範囲で保証するFBG計測器がありますので、注意が必要です。

2.波長再現性
FBG波長を測定した場合の測定値のばらつきを示しており、小さいほど高性能と言えます。カタログには波長測定精度と記載される場合もあります。

また、この値がFBG計測器の波長分解能となります。一定時間連続測定した際のブラッグ波長のバラつきの標準偏差σあるいは、3σ(標準偏差の3倍値)で表記されます。国内製品は3σが、海外製品ではσが使われることが多いようです。

厳密には、波長再現性は評価時間に依存します。たとえば、1分間連続測定した場合と、24時間連続測定した場合の測定値のそれぞれの標準偏差は、当然後者の値が大きくなります。これは、FBG計測器の置かれた環境の変化(特に温度)が、FBG計測器に影響を与えるためです。

FBG計測器が野外に置かれている場合はなおさらですが、室内で置かれた場合でも、エアコンのON/OFFにより、室温が変化し、FBG計測器に影響を与えます。FBG波長の測定結果に変化が観測された場合、実際にFBGに変化があったのか、それともFBG計測器が外部からの影響を受けたのかが分からない場合がありますので注意が必要です。

波長再現性は、平均化により小さくすることができますが、その分、測定速度が低下します。

3.測定周波数
1秒間に測定するブラッグ波長の回数です。時間分割方式のFBG計測器では、FBGの数に反比例して低下します。

4.波長域
波長分割方式FBG計測器では、FBGスペクトラムが観測できる波長範囲を示します。波長域が広いほど、多くのFBGを接続できます。時間分割方式FBG計測器では、ブラッグ波長のシフトの測定可能範囲を示します。広いほど、大きな歪を測定できます。

FBGを使用する目的により、FBG計測器に要求される性能も異なります。

たとえば、ブラッグ波長から温度を測定する場合、波長確度が最重要となります。温度計測の場合、温度の相対的な変化よりも、絶対的な温度を測定するため、ブラッグ波長も絶対的な波長を測定する必要があります。

そのため、高い波長確度が要求されます。また、市販されている温度計測用FBGは、あらかじめブラッグ波長と温度の関係式が明示されている場合があり、この関係式の結果を保証するためにも、波長確度が必要です。

振動を測定する場合には、ブラッグ波長の短期的な変化を観測するため、波長確度よりも波長再現性が重要となります。特に微小な振動を観測するためには、高い波長再現性が必要となります。

より高い周波数の振動を計測する場合には、測定周波数も高い必要があります。100 Hzの振動を観測するためには、測定周波数はその2倍以上(200 Hz以上)が要求されます。

歪の長期的(数日~数年)な変化を観測する場合には、温度測定と同様に波長確度が保証されたFBG計測器を使用します。波長確度が保証されたFBG計測器であれば、昼夜や季節の温度変動に対しても、測定結果を保証できるからです。

従来の歪ゲージでは、歪ゲージそのものの劣化や計測器の経年変化により、長期的歪測定は非常に困難でした。しかしながら、FBGを利用した光ファイバセンサでは、ブラッグ波長の絶対値を高確度に測定できるため、正確な長期的歪変動の観測が実現できます。

歪測定では、ブラッグ波長の温度による変動を相殺するために、歪が加わるFBG(測定用FBG)と歪が加わらないFBG(温度補償用FBG)を近接させて、それぞれのブラッグ波長の差を歪量とする測定が一般的です。

波長分割方式では、それぞれのブラッグ波長が異なっている必要がありますが、その差は小さいことが望ましいです。波長域全域で波長確度が保証されたFBG計測器であれば、問題ないのですが、そうでないFBG計測器の場合、FBG計測器自身のドリフトが波長によって異なる場合があります。

この影響を低減させるためにも、測定用FBGと温度補償用FBGのそれぞれのブラッグ波長は近いことが望ましいです。時間分割方式FBG計測器では、センサ部に同じブラッグ波長のFBGを使用するため、この問題はありません。

代表的な性能を表1に示します。

表1 代表的なFBG計測器の性能
表1

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