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光ファイバセンサ概論(6)

基礎編<その1>(10)

基礎編<その2>(10)

基礎編<その3>(10)

基礎編<その4>(3)

設計編<その1>(10)

設計編<その2>(3)

施工保守編<その1>(10)

施工保守編<その2>(10)

施工保守編<その3>(7)

コラム(11)

施工保守編<その1>

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08_物理的反応性について考慮すべき事項

事務局

 力学的反応以外の物理的反応性について説明します。物理的反応性は「温度」、「電気的反応性」および「放射線」に分類します。

1.温度について
 温度は化学的反応性、力学的反応性、自己変質性を加速させる要因となる場合があります。温度が上昇/下降を繰り返す場合は熱疲労が生じやすくなります。部材の温度特性を充分に把握する必要があります。加えて、部材やセンサ間の固定系の温度変化の影響を必ず確認して下さい。メーカーが提示している適用もしくは使用温度範囲という表現は、施工が終了し計測が出来る温度範囲を示しており、施工ができる温度範囲ではありません。樹脂シ-スを有する部材の場合、低温側では硬化してしまい、延線時の張力が働くと割れてしまうことがあります。特に、曲がり部で発生しやすいので注意が必要です。布設後も積雪や風による外力も同様に働くことに留意して下さい。

2.電気的反応性について
 雷と電磁ノイズ対策が課題になります。雷には直接落雷した直雷(数十万V)と、落雷した近傍で誘導される誘導雷(数万V)があります。ア-スなどを利用して、地中に電流を逃がすことはよくやられていますが、地中を電気が流れ他のア-スに電気が流れる場合(地絡電流)がありますので留意して下さい。屋外での直雷対策には避雷針や架空地線で部材に落雷することを防止することしかありません。誘導雷には避雷器(サ-ジ防護デバイス:SPD:Surge Protective Device)により対応する必要があります。光ファイバは雷と電磁ノイズ対策は不要と理解しがちですが、直雷に対する対策は必要ですし、部材に金属を使用している場合は、適切な絶縁部を設けるなどの対策を施します。目安としては空間放電電圧値10 kV/cmや樹脂やセラミックなどの耐電圧特性値を参考にします。送電線や電気通信線と光ファイバが1つのケーブル(光複合ケーブル)として適用される場合にも同様の留意が必要です。

3.放射線について
 放射線の定義は曖昧な概念です。放射性物質から放出される電磁波および粒子線と考えると、放射性物質とは何かが問題になります。放射性物質とは放射能を有する物質と考えると、天然に存在する放射性元素もしくは同位体と人工的に中性子の吸収または核反応を起こして生成される放射能(放射化)を有する放射性元素もしくは同位体となります。まとめると、狭義的には、放射線とは放射能を有する放射性元素もしくは同位体から放射されるすべての電磁波および粒子線となります(広義的には、人工的な手段を中性子に限らない理解もあり、一般的な電波や光を含む場合もあります。瞬間的な電磁波の放射化と理解します。)。放射線は様々な分野で研究されており、その分野での発見順や経緯、発生する場所や電離的性質などによって名称が付けられている場合が多く、この項では、施工する際に考慮しなければならない放射線の性質を基に分類します。電磁波として、γ線、X線と紫外線、粒子線としてα線、β線、電子線と中性子線を採り上げ、作業の安全管理と部材の劣化という観点から以下に説明します。
 作業の安全管理については放射線管理区域として特別の法的規制のもとに実施されています。作業者も関連資格がないと作業できません。したがって、相手先と慎重な事前検討が必要となります。いずれの放射線も人的被害をもたらしますが、透過力の高い中性子線、γ線やX線には格別の遮蔽の必要があります。特に中性子線は物質を放射化させる性質があるので注意を要します。α線、β線、電子線や紫外線は、人体に直接照射を受けないように簡単な遮蔽と反射による防護を考慮して下さい。
 光ファイバを放射線環境下で使用する場合には、放射線による光ファイバの伝送損失の増加が問題となります。光ファイバにγ線が照射されると光ファイバのコア部にカラーセンタ(欠陥)が形成されることにより、光ファイバの伝送損失の増加現象が生じます。この伝送損失の増加が原因で、光ファイバセンサで得られる計測結果に誤差が生じる場合があります。伝送損失の増加は、放射線量と放射線に曝される時間により異なりますが、通常の光ファイバ(シングルモード光ファイバやマルチモード光ファイバ)は放射線による伝送損失の増加量が大きく、放射線量が高い環境下では長期間の使用には適しません。しかし、コアが純石英でクラッドにフッ素ドープした光ファイバは耐放射線性能が高く、線量の高い環境下でも伝送損失の増加量が低く、適用することが可能であることが判っており、温度計測などで適用されている報告もなされています。なお、線量の低い環境下での使用では、このような特殊な光ファイバを使用しなくても、光ファイバを金属管で保護したり、ポリイミドコートを施したりすることでも一定の効果があることが知られています。
 部材の劣化については、中性子線を受けると金属材料が脆くなるという放射脆化と材料が放射化することや、他の放射線でも樹脂材料の低分子化が進行し機械的強度が低下することに留意して下さい。

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